わが国の鳴り砂調査2004

 鳴り砂の浜の調査を以下の方法で調査した。かねてから、全国の鳴り砂の状況がどうなっているのか、同一のレベル・計測法で調べることは、日本の鳴り砂を把握するうえで重要であるが、その一部ができたの報告する。

 

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報告書の前文を以下に記しました。

 詳細は、レポートを参照ください。 

 『わが国の鳴り砂調査2004』、pdfファイル、10.5MB

 注)『わが国の鳴り砂調査2004』内の”琴ヶ浜”トップページにリンクしている琴ヶ浜の動画は、ここでご覧ください。

 ご注意!!

 このファイルが開くと同時に、鳴り砂の音が響いてきますので、他の方にご迷惑の掛からない音量にセットしてお開きください。なお、各地域の所を開くときも音が自動で鳴ります

 

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はじめに

 砂が「クックッ」とか「キュッキュッ」と鳴るということをどれだけの人が知っているのであろうか.テレビ新聞等でここ数年良く取り上げられ報道されているので次第に知っている人が増えてきていることは事実であろう.しかし,その音を浜で聞き鳴らし体験した人は更に少ないでしょう.

 

 鳴り砂は化学的または物理的な微妙な変化で音を失ったり感度を低下したりするデリケートなものである.しかし,自然界の鳴り砂はこれまでの環境の変化ではそう悪くなるものではないと考えている.島根県の琴ヶ浜は少なくとも10年の変化はない.もちろん,その10年の中では,いや数日の内でも悪いときや非常に良いときもあり,と良悪を繰り返していることが観測の結果分かってきた.短い周期で変化しているということは,海が汚れたとか砂浜のゴミなどの環境の影響ということよりもっと他の要因があると思われる.

 

 むかしは良く鳴いていたと40,50年前の話しを語ってくれる地元の人の話しを聞いて,その頃の状態の砂を体験したいとどれくらいの感度だったんだろうかと想像を巡らす.琴ヶ浜近隣の砂浜を歩くと今まで一般には知られていなかった鳴り砂の浜が次々とに発見されてきた.浜の近くの古老から「ここでもむかしから鳴いていたよ」ということをよく聞く.このような情報も非常に大切であり,今後まとめていかねばならないと調査しながら感じた.

 

 鳴り砂を本格的に研究・調査している人は少ないが、そのような状況の下での情報交換もなく単独で研究が行われているのが現状であると思われる.この珍しい貴重な自然の現象を無くさないためにはきちんとした鳴り砂の科学的な研究をすることが重要であることは言うまでもない.鳴り砂を後世まで残していくには,鳴り砂のことを十分理解して正しい情報を発信することである.

 

自然の一員

 自然環境を美しく保っていくことでもちろん鳴り砂は守られると考えられるが、ただ美しい環境を作り上げねばならないという表面的な美しさでは駄目であろう.鳴り砂にとって美しい環境とは何かということも良く考えて対処し,形だけの取組みをすべきではない.生きていくためには進歩は必要であるが,それは人間だけではなく自然に生きているすべての生物を含めた生き物すべてがが良いほうへ向かうべきである.自然の営みの中で自然破壊をしているのは人間であろう。それゆえに人間が確固たる信念を持ち自然に生きる指導者の一代表として真のリードを持って行動しなければならない.

 道路が出来ることは便利である.しかしそれは人間だけのことである.森林が伐採され水の流れが遮断され動植物が姿を消してしまう.微生物までも死滅している.そして砂までが変わってしまっているであろう.身近な道路の設置ひとつにとっても自然に与える課題は大きいはずである。

 

 開発は必要である.そこにはあらゆる可能性を考えた開発をこれからはやっていかねばすべてが滅んでしまう.知識がないと,いつの間にか一方的な活動になってしまい気づかないものを消してしまうことになる.鳴り砂への知識を高め開発と自然に同居した中で鳴り砂を守り続けなければならないと思う次第である.

わが国の鳴り砂

 有数な日本の鳴り砂がどのような状況にあるのか,鳴り砂を有する地域への協力で簡単ではあるが今回始めて音の比較などの調査が出来た.まだ,鳴り砂についての科学的な解明がなされていない中で、詳細な研究調査の検討が出来る状況ではないので,この報告書では,音の解析を主としてまとめた.今回の調査は,鳴り砂の科学的解明のスタートラインに立ち歩き始めたというものである。今後同様な調査をして鳴り砂の浜の鳴り砂の特性の変化に注目し研究していくことが鳴り砂の本質を知るうえで大切だと思われます.さらに,これを機会に,多くのかたが鳴り砂に関してそれぞれのテーマを見つけ科学的な研究に取組み,正しい鳴り砂の正体を一つ一つ探求・究明いって欲しいと願う次第です.

 

調査方法

調査対象は、全国鳴き砂(鳴り砂)ネットワーク(事務局:日本ナショナルトラスト)の会員に直接お願いした。

 調査方法として,以下の8項目を依頼した.

 1)砂を500cc(ペットボトルなど)採取する

 2)採取者

 3)採取日

 4)採取場所(国土地理院の25,000分の1の地図にマーク.配付)

 5)採取住所

 6)浜の紹介、様子

 7)風景写真

 8)現状の取組みなど

 

 送られてきた砂は,以下の5項目の特性を調べ,考察を加えた.

 1)粒度分布(JIS標準ふるい,8φインチ)

 2)粒子拡大写真(NIKON COOLPIX 995)

 3)煮沸洗浄での濁り写真

 4)発音解析

   (1)生の砂の音

   (2)煮沸した砂の音

 5)安息角

 

報告の型式

 報告書は、ペーパー報告書を作成しさらにCDに収め配付した。CDはPDF型式のファイルで収められている。CDでは実験室で鳴らした各地の鳴り砂の音が聞け、音波形および周波数分析結果に加え、聴覚的に聞くことができ誰でもが音の相違を感覚的に比較できる。このPDF型式での音リンクは鳴り砂とはどんな音なのかということを何よりも先に理解するのにもっとも近道な方法であろう。それは鳴り砂の音を音声として後世まで残すことができ,在りし日の浜の音を忍ぶことができるであろう。

 だが、あの鳴り砂の浜を歩いて身体全身に感じる感動は今のデジタル技術を駆使しても我が魂には伝わってこない。鳴り砂はその浜に踏入り体験して始めて知りえるものである。

 今後,できることなら,実際に浜を歩いた音をそれぞれの浜で収録し,参考資料としてデジタルで残せるようにしたいものである.その一例を琴ヶ浜(仁摩町馬路,後記)で示しました.

 

2005.11.29,志波