鳴り砂の音は、どんな音?
鳴り砂の音は、楽音特有の倍音構造(hurmonic overtone)を有していて、耳にして心地よい音である,と言うが、この表現には、二つの疑問がある思える。
その1)倍音構造を有しているその2)心地よい音
の、2点である。
最初の問題は、なるほど鳴り砂と鳴らない普通の砂を容器で鳴らして音を解析すると、鳴り砂は倍音構造を示し、鳴らない砂は倍音構造は現れないのは事実である。自転車で行っても15分足らずの琴ヶ浜のすぐ近くに住んでいるので、たびたび足を運んで鳴り砂を観ている。浜を歩いたり手で擦ったりすると、手に振動を感じながら鳴り砂の音を聞き取ることが出来き、その音を拾ってくることも出来る。そのような琴ヶ浜の、本来の鳴り砂の音を分析してみると、これまで言われているような倍音構造を示さない結果を得ている。
倍音構造とは、音のスペクトル分析をしたとき、一番低い音を基準として、その周波数の2倍、3倍、4倍・・・という高い音(オクターブ高い)が同時に発生しているような音のことである。それらの音は、それぞれsin曲線をしていて、それらの合成音が鳴り砂の音(倍音構造を有する音)として、聞えてきているのである。絶対音感を持っている人は、それらの音を聞き分ける能力を有しているといわれている。
2番目の問題の、倍音構造を有する鳴り砂の音は心地よいという表現であるが、これはあくまで主観的な表現であって、音楽にしろ鳴り砂にしろこの表現を使うのは疑問である。現に鳴り砂の音に関する情報を与えていない34人に初めて鳴り砂の音を聞かせてその感想を書いてもらったところ、3名の人が、気持ち悪いと書いた。20数年前、ピアノの音がうるさいと言った殺人事件が起こっている。鳴り砂の音を心地よいと一方的に表現するのは誤りである。人は砂から音が出るというのは、珍しい!と驚き、なぜ、なぜ?と不思議がるのである。今まで、展示会をしていて、その音を聞いた人が最初に発する言葉は、気持ち良いではなく、どうして?である。
もう一つの逆の例を挙げよう。水琴窟という日本人が発明した雫の落ちる響く音を発生させるものであるが、これはきっと人の心を自然界に引き込む音だと、わたしは思う。今のことがで言う、「癒しの音」であろう。そんな音ならば、きっと心
地よいと言えるのではないだろうか。その音の周波数分析をしてみると、これまた、倍音構造は示さない。この音は乱暴であるが、水琴窟の音の発生は、太鼓の音のような発生原理なのかもしれないと、考えると、私の測定結果のように水琴窟の音は倍音構造は出来ないというのは正しい結果である。太鼓などのような打楽器は倍音構造を示さないのである。しかし、きっと水琴窟の音を聞いた人は、気持ち良いと言うであろう。
鳴り砂の音の発声方法の相違による音の違い
-倍音構造解析を中心とした実験結果-
1)まず、琴ヶ浜の砂をガラス容器に入れて、ガラス棒で搗いた音
きれいな倍音構造になっていることが分かる。基音は750Hzで、そのオクターブ上は1,550Hzであり、3倍音は2,300Hzである。スペクトルバンドで見てもそのことが良く分かる。
2)浜を歩いたときの音
これは浜を歩いたときの鳴り砂の音の周波数分析結果であるが、明らかに、単音である。若干の倍音が発生しているように観えるが、鳴り砂容器の音に比較して倍音構造は認めにくい。
3)浜を手で擦った音
43.75Hzの音は、波の音である。波の音を分析すると43.7Hzは波の音であることが分かる(図-**参照)
そこで、約、200Hz以下の音をカットして詳しく周波数分析すると、擦り音は、やっはり、倍音構造の音は発生していないことが分かる。(図-**参照)
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4)砂浜を直接、1)で使った棒を用いて鳴らした音
鳴り砂の音が発生しているが、倍音構造はほとんど発生していない。若干の倍音は観察されるが、容器で鳴らしたときのような、倍音構造は得られない。このようなものでも倍音構造であると言うのであろうか?
5)布袋に入れた砂を、両手で急激な力を与えて鳴らした音
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オクターブ上に小さく音が発生している。ガラス容器のようなはっきりとした倍音構造にななっていない。3倍音は全然確認できない。
6)氷のうで鳴らした音
これは湿式の鳴り砂であり、上記のものと性質を異にしていると思われるが、比較参考のために実験をした。乾式でやってみたが鳴りにくかったので湿式にした。
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これはオクターブ倍音のみが大きく発生している。
(7)超高感度の鳴り砂
ビーズからできている軽い粉体(嵩密度=1.0)です。ホームページを参照ください。そこでの実験は、鳴り砂ポットで鳴らした音ですが、倍音がたくさん発生している特徴のある、そして不思議な人工鳴り砂です。意識して鳴り砂のためにつくったビーズではありません。
ここでの鳴り砂のまとめ
1)鳴らす方法により、聞えてくる音が違っていることは体験することであるが、詳しくそれらの音を分析すると、発生している音がなるほど違っていることが判る。
2)砂浜で鳴らした音は、どうも倍音が発生しないようである。
3)容器で鳴らすと、倍音構造を有する音が発生していることは、間違いないようである。
4)布袋で鳴らすと、倍音が出ないようであるが、ゴムの袋では倍音構造の音になるようである。
5)倍音構造を有しているからといって、気持ち良いとは言えない。水琴窟の音は、倍音構造でないのに、気持ち良いということからも言えよう。
今後の研究
・紹介したビーズでの音を、ゴム袋、布袋で実験し、鳴らす方法の研究を広げる。
ヤマジノホトトギス(2003.9.17,仁万花の道)
-NIKON F70 AF MICRO NIKKOR 105mm-