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室津海岸の鳴り砂
<< 山口県豊浦郡 >> ******|| 立派な鳴り砂の海岸です!汚さないように守ってください ||**********************
鳴り砂海岸への憧れ(あこがれ)
九州福岡県大牟田市三池新町陣屋の実家に帰るときは、仁万からJR山陰本線を使って日本海沿を走っていく。ゆっくりと走る車窓に飛び込んでくる最初の浜は、もちろん琴ヶ浜である。黒い屋根の家々の間から、紺碧の海に白波がたち、白砂の砂浜が私を見送ってくれる。数分もすると遠くに湯里の海、黒松海岸、福光海岸などが流れていく。さらに西に走ると、広い波子海岸が見えているく。ここも鳴り砂の海岸であるとの情報を得ているが、まだ自分の目では確かめていない。数年前までは、”急行さんべ”で下関まで一本で行けたが、いまでは、数回乗り換えねばならない。最初の乗り換えは、山口線と山陰本線の分岐駅の益田である。15分程の待ち時間でローカル列車に乗り換える。
益田を出ると、一気に海岸線が広くなり山並みが美しくなってくる。益田から20分も走ると、山口県に入り、阿武町清ヶ浜が遠くに見えてくる。浜はテトラポットが横たわっている。2000.7.に調査したときには、全く鳴り砂の音を発していなかった。これからの海岸線は、北長門海岸国定公園になっていて、数々の大きさ、形の島々が、青々とした海に浮かんで目が離せないところである。萩に入ると、列車は曲がりくねりながら走り、小さな砂浜が次々と飛び込んでくる。倉江浜らしきところ、小原浜らしきところなどを通過していく。何度か通り、地図と時刻表を見比べながら、楽しんでいると、次第に、それらの浜の位置が読めて、ますます興味が湧いてくる。ここも鳴り砂の浜ではないだろうかと思える浜がいくつもある。
「湯谷湾はどの駅で降りればいいのだろうか。赤屋の浜はどんな浜なのだろうか」そんなことを思い浮かべながら、ローカル列車を楽しんでいると、しばらく海から遠ざかり山間を走る。トンネルを通過するたびにゴーッという音とともに冷気が窓から勢い良く吹き込んでくる。気持ちのいい風である。
山間を抜けると、急に明るくなって前方に海が広がってくる。響灘である。名前の通り、きっと荒波が西に面した海岸線には吹きつけてくるのであろう。列車は、191号線と平行に走っていく。車窓からは礫の海岸が続き、遠くに砂浜が少し見えるが、列車はまた海から離れていく。室津海岸は車窓からは見えない。想像するしかなかった。
九州に入ると、平野の中を走っていく。筑後川一帯に広がる広大な筑後平野である。柔らかい山肌がほっとさせてくれ、懐かしい山並みが近づいてくる。大牟田に入ると今は無くなってしまったが、割れたガラス窓が多かった黒づんだ工場のビルが、脳裏に見えてきて、幼少の頃が思い浮かぶ。父に時々弁当を持っていっていた。守衛さんの詰め所で待っていると、社内を縦横に線路が走る工場の建物の向こうから笑顔の父が歩いてきていたことは、良く覚えている、、、。帰りにはお小遣いを頂いた。
両親が健在の時は必ず弁当を作ってくれていた。
大牟田から仁万への帰りには、今は姉が弁当を作ってくれている。お昼は、下関をでて開く、ゆっくりと食べ、食べ終わるころ、響灘を通る。季節によっても沈むところが違うが、夕陽がきれいに望める山陰本線の砂の旅である。そのような山陰本線。
室津海岸
萩郷土博物館の学芸員福田靖子さんと、山口県阿武町で2002年3月30日に開催された鳴り砂シンポジュウムで出合った。会話の中で萩郷土博物館には、山口県近郊の鳴り砂が保存されていていることを知った。鳴り砂のチェック
をしてもらえませんかと、メールが入り、早速送られてきた。わたしは、発音特性チェックをさせてもらうことにした。
その中には、私の懸案の室津海岸の鳴り砂も保存されていて、楽しみになった。室津海岸は、情報では鳴り砂の浜であるということを入手していた。そのような情報のもとで、豊浦町観光課に問い合わせてみたが、そこは鳴り砂の浜ではないと聞いていた。私は郷里が九州大牟田市であり、山陰本線を下って帰るときにも、車窓からの山陰の海岸線が気になっていた。特にその室津海岸には殊の外魅かれていた(上記)。
室津海岸は、JR山陰本線から離れたところに在り、車窓からは見えない(左図)。この形は、琴ヶ浜と良く似ているのが、不思議なくらいである。
送られてきた砂
粒子の拡大写真を見ると、(1)透明感の在る石英質が多い。
(2)粒度は、琴ヶ浜ほどではないが、揃っている。
(3)角が良く取れている:琴ヶ浜の丸さに劣らない。
(4)光沢が在る。
(5)粒度的には、少し細かい。
などの特徴が在る。
室津海岸の拡大写真の砂は、琴ヶ浜の砂に良く似ているところが在るように観える。以下の写真から分かるように、透明の砂が多く観え、実サイズの砂は、琴ヶ浜の砂よりも薄い黄土色です。実際の海岸を、いつも見慣れている琴ヶ浜の海岸と見比べれば、室津の海岸は、白に近い砂浜に見えることであろう、と想像した。
送られてきた1993.9.12に採取された室津海岸の砂 送られてきた1994.2.22に採取された琴ヶ浜の砂 音のチェック
砂の発音特性をしらべてみた。室津海岸の砂は、二種類送られてきて、そのままの状態と煮沸洗浄した時の音をしらべてみた。その結果を、以下の表にまとめた。送られてきたそのままの93年の砂は、ほとんど音を発しなかったが、94年に採取された砂は、好い発音特性を示した。煮沸洗浄してみると、いずれも回復してきたが、93年の砂は、やはり回復率(?)は良くないようである。2000年4月24日の砂は、そのままでも鳴り砂の特徴を示し、洗浄すると更に感度の好い鳴り砂になっている。
この違い(煮沸した砂の周波数)がなぜなのか?(同じような数値になぜ回復しないのか?)
- 採取時期が違う:季節によって砂の移動が違う
- 採取した位置が違う
- 洗浄条件が違ってしまった?:琴ヶ浜の砂の場合は、同じような数値に回復している(表参照)
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周波数解析と音
以下の図は、周波数解析をしたスペクトル解析図である。左図:送られてきたそのままの砂。右図:煮沸洗浄したときの砂の特性値である。
鳴り砂の特徴である発音特性を示していることが良く分かり、まさしく室津海岸は鳴り砂の浜であることを物語っています。
- 煮沸洗浄砂の音波形が鳴り砂の特徴である、魚の骨のような形を示していない原因は、雑音が入ったからであると思われる。雑音が入っても、スペクトル解析の結果には影響はでない。
- 煮沸洗浄により、本来の周波数に回復していることが分かる。室津海岸の砂は、この結果より、好い鳴り砂であると言えよう。
送られてきた砂そのままの音スペクトル 煮沸洗浄した砂の音スペクトル 画像をクリックするとその音が聴けます。右の測定は、雑音が入っていて、波形が崩れています。
もっとも新しい室津海岸情報鳴り砂メーリンググループのメンバー、山口大学理学部地球科学教室の宮田教授からのメールで『〜前略〜 ところで,先日下関の北,豊浦郡の室津海岸にでかけました.
添付した地図の+印の地点です.
テトラポットで守られているにも拘わらず,非常によく鳴いていました.
〜中略〜
Sent: Friday, July 12, 2002 5:39 PM』
萩博物館から送られてきた砂を解析した結果を実証するかのように宮田先生の確認調査報告が全く独立に入り、室津海岸が鳴り砂の浜であることは、確実となった。
まとめ
- 室津海岸は立派な鳴り砂の浜である。最新情報(山口大学理学部地球科学教室の宮田教授)でも確認された。
- 砂の拡大写真から、石英質に富んだ砂である。
- 砂は良く研磨されている。
- このことより、室津海岸の砂は、移動のない砂浜であると想像される。湾曲した浜の形状が、琴ヶ浜の形に非常に良く似ているが、この湾曲が、砂の移動を少なくしているのであろうと思われる。もちろん、海底の海流の動きも含め、浜の海流の動きの調査が必要である。
- 汚染度は、即答できないが、思ったほどの汚染はないと思われる。煮沸効果は、保存状態も考えねばならない。
- 採取時期による鳴り砂の発音特性の違いは、もう少し研究調査しなければ分からない。