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青少年のための科学祭典
2002 全国大会

 
北の丸公園にある財団法人日本科学技術振興財団


8月1日から、東京北丸の内公園にある科学技術館で行われた祭典は、大勢の入場者の元で盛大に終わった。事務局からの情報によると、以下の入場者である。

 今年の入場者数は次の通りとなります。

マスコミに多く取り上げられたせいか、

例年になく多くの方々が来場されました。

8月1日 10822
   2日 12574名
             3日 17379名(前半計40,775)
    4日 22766名
              5日 18723名(後半計41,489)
 計   82264名


 祭典に、われわれは鳴り砂について出展した。出展は、後半の4,5日でした。

 今回は、山口大学理学部 宮田教授、産業技術総合研究所地質調査総合センターの兼子様、それに筑波大学大学院の高下君の共同・協力で出展しました。われわれは「鳴り砂メーリング」のグループです。

以下は、鳴り砂コーナーの要旨です。


<ここから> 

「鳴り砂」の音や振動を体験しよう!

仁摩サンドミュージアム(島根県仁摩町) 志波靖麿

山口大学理学部地球科学教室(山口県山口市) 宮田雄一郎

●どんな実験なの?

 容器や袋に入れた砂に急激な力を加えると「キュッ、キュッ」と音を発する砂を「鳴り砂」といいます。石英を多く含んだきれいな砂が良くなります。そのような砂は、時々きれいな砂浜に見つけることが出来ます。そのことは実験室でも出来るので、鳴り砂を鳴らして、音の違いや、伝わってくる振動を体験します。

●実験のしかたとコツ

 ガラス容器に鳴り砂を入れて突き棒で突きます。すると、「キュッキュッ」ときれいな音が響き、同時に突き棒からかすかな振動が手に伝わってきます。付く速度を変えてやってみよう。音や振動がどのように変わるだろうか。何度も突いていると、鳴らなくなってきます。砂の表面に小さな粉がくっついてきたからです。お湯でグツグツ煮て乾かすと、また鳴りだします。

 水中でも鳴るんですよ。水中鳴り砂を横にして静かにゆすってみましょう。容器の大きさにより違った音が聞こえてきます。 

●気をつけよう

1)棒でついたとき、砂が飛び散りますので、目や口に入らないようにするために容器に顔を近づけないようにしましょう。

2)勢いよくつくと、ガラス容器が割れる場合があります。割れた場合は、破片でけがしないようにしてください。

3)鳴らなくなった砂をお湯で洗うとき、熱湯が飛びます。やけどしないように注意してください。

●もっとくわしく知るために

 鳴り砂の層を堅い棒で急激に突くと、砂の層にすべり帯という層が段階的に出来ていきます。その砂の層が振動して周囲の空気を振動させて音として聞こえてきます。摩擦力の大きい(摩擦係数が大きい)砂の場合に発する珍しい現象なのです。砂の表面に粘土のようなものや、油などが付着してしまうと、音はしなくなります。ワイングラスをきれいに洗い、きれいな指でこするとワイングラスが音を発しますね。この現象(スティックスリップ現象)と同じことが砂の表面で起こっているといわれています。

 石英の成分を多く含んだ海岸の鳴り砂は、きれいな海の水で洗われ、波の動きにともなって砂の表面はお互いに擦合って絶え間なく磨かれています。砂浜が生活排水などで汚れたり、波の動きを変えてしまうような工事をすると砂の成分が変わってしまい、砂は鳴らなくなります。かって全国には111ヶ所(2002.8現在)ほどありましたが、現在鳴っている浜は50ヶ所ほどが確認されています。

◆鳴り砂についてもっとくわしく知りたい場合は以下を参考にしてください。

雑誌:兼子尚知「地質ニュース」547号p.58-60(2000)

インターネット:http://www.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~ymiyata/3othersi.htm

http://www.staff.aist.go.jp/n.kaneko/

http://www.f5.dion.ne.jp/~yshiwa/

◆注意:鳴り砂の浜は天然記念物に指定されたり、地元で保護されていますので、許可なく採取してはいけません。自然保護のためにも海岸を汚さないようにしましょう。

<ここまで>


 

 展示は

(1) 豊間海岸と琴ヶ浜の海岸の砂を使って、鳴り砂を実際に体験するためのコーナーをもうけたが、音が発すると、すべての人が驚きと「なぜ?」という疑問を抱いていた。両方の砂の音を比較して、その違いを体験してもらい、なぜ違うのかという説明をする。「琴ヶ浜の音が高い音ですね」ほとんどの人がそう答えていた。

(2) 顕微鏡で砂の形や成分の違いなどを見てもらう。

 (3) 鳴り砂は、水中でも音が発することも知ってもらうために、ポットに水と一緒に入れた鳴り砂を、ゆすってもらう。「ケロケロ」と蛙のような音や、3リットルの大きな容器に入れたものは「グーグー」と特異な音に驚く。

 

 (4) コンピュータで、全国の鳴り砂データーベースで紹介した。子供たちは、簡単に操作して、各地にある鳴り砂の地を調べていた。

 

 (5) 鳴らし終わった鳴り砂は、鳴り砂の復活の仕方の説明書を入れて、小さな袋に入れて持って帰ってもらった。

 (6) 背後の壁には、鳴り砂の説明、鳴り砂と鳴らない砂との違いの説明、洗浄による鳴り砂の変化などを掲示した。右の絵は、その一部である。

 

 三人で対応したが、昼食を取りに行くのも手分けして行くほどの盛況で、てんてこ舞いであった。持っていっていたパンフレットも、800部が一日半で終わってしまった。他のブースも、入場者数を見ても分かるように、盛況に賑わっていた。

 


 展示会が終わって、東京へ出て、反省会。やはり、論点は、「鳴り砂とは何か?」である。

 (1)砂であるからには、地質がく上のその定義から、サイズが決まる。(2-0.065mm)

 (2)音がするということから、その現象をとらえた考えを入れて、砂の表面でスティックスリップ現象が生じている。

 (3)音の発生として考えた場合、人の耳に届くほどの音の強度があること。

 (4)規則的な振動(波形を呈する)をしていること= (2)項になるかも。

 (5)広義には、どのようなもので上記の条件下で音が発すれば鳴り砂と言えるであろう。しかし、鳴り砂の生成から考えて、自然に存在する砂であると考えたほうが、紛らわしくない。

 

 鳴り砂の定義から入ることが科学的な研究の一歩であろうが、まだまだ鳴り砂は、その現象の調査の段階にあると思われる。分からないことがあまりにも多すぎるというのが現状である。いろいろな研究者が報告しているが、疑問を解いてくれるものではない。固定条件が多すぎて一般性を欠いている。いわゆる、鳴り砂説という段階である。

 鳴り砂の研究分野は、非常に広いもの特徴である。

 音響学、地質学、粉体工学、物理学、表面化学、摩擦論、化学(水質、洗浄など)、環境学、海流工学、地球科学、、、もっとあるかもしれない。

 しかし、真剣に鳴り砂についての調査なり研究を進めていくことにより、近い将来にその本筋が解明されるであろう。どの分野から解きほぐしていくのか、、、。共同研究が必要であろう。

 


鳴り砂の体験<棒で鳴らす>
<説明に忙しい宮田先生>
説明に忙しい<左:高下、右:宮田>
説明をデジカメに収める人
鳴り砂体験
真剣に質問
説明に応対、志波
水中鳴り砂の説明、宮田

一杯での議論の後は、腹ごしらえ
ブースは違うが、兼子さん
一杯での議論の後は、腹ごしらえ

雑感

 頭の中には「もしか袋」がある。この袋は、お坊さんが首に下げている袋のことである。しかし、それは本当の名前ではないかもしれない。巡業しているときに、もしかしたら頂き物があるかもしれないので、頂いたときににはこの袋に入れるというのである。

 それと同じように、自分の頭の中にもしか袋を意識的に持つようになった。その話しを聞かなくても、その袋はあったであろうが、そのような話しを聞いてからは、意識している。現代風に言うなら、常に情報のアンテナを張っておくということかもしれない。

 私は腕に手作りのブレスレットをはめている。宗教的な意味は全くない。しかし、見方によってはそう見えるかもしれない。その辺の議論はここではしないとして、そのブレスレットの玉の一つが割れてきていた。ムクロジという木の実で作っているが、炊事をしていて濡れてふやけてきたのである。この実はめったに手に入らないもので、仁万でいろいろと尋ねていたが、知っている人はいない。

 今回の祭典は、200近くの出展があったが、その中に、草花の種のコーナーがあった。立ち寄って話しを聞いていたが、その合間に「この実は何かご存知ですか」と失礼な質問をした。もちろん答えはすぐに返ってきた。「ムクロジでしょう。それならこの会場の正面の700m位のところにありますよ」と教えてくださった。一瞬うれしかったが、この広い公園の中で、すぐ前と言っても、ムクロジの木がどんなものだかも知らないで歩き回っても見つかるはずはないと思った。

東京で拾ったムクロジの実!
長さ平均径=12mm
青々と実っているムクロジ

 昼食を終えて、ちょっと外に出てみた。やはりどちらに行っていいか検討もつかなかった。木陰のベンチに腰を下ろして少し休憩した。それでもと、ちょっと園内を歩いてみた。ちょうど、公園を管理されている電動草刈りをもった人に出会った。「あの、ちょっとお聞きしたいんですが、この公園にムクロジの木があると聞いたのですが、、、」「あ、ありますよ」とわざわざ案内してくださった。それは私が休憩していたエリアであった。大きな木で、その下には沢山の黒い実が落ちていた。「わっ、あった!」私はうれしく声を上げた。「これもらってもいいですか」「え、どうぞどうぞ。これなかなか芽がでないんですよ。まだ私は見たことがありません」「そうなんですね、私ももう2年近く水に浸けているんですが、全然発芽しないんですよ。ありがとうございます」木の回りを何度か拾い廻っていたら、発芽している実を見つけた。拾ってきて、今、鉢に植えているんだが、、、成長してくれるだろうか。

 

 これが、まさしく「もしか袋」であろうと思った。沢山の実を、3日間にわたって昼食の合間に拾った。

2日目に、拾っていたら「何をなさっているんですか」と40歳くらいの女性が近づいてきて聞いた。「え、ムクロジを拾っています」「え、これがムクロジですか。2ヶ月ほど前に私も見つけて、なんという実だろうかと、思っていたんですよ。思いが解けたわ、、、」「この実でこんなものを作るんですよ」「ま〜、すてきですね」と思わぬ出合いがあった。

 公園には沢山の蝉の穴があいていた。そしてふとムクロジの木を見上げたら、沢山の蝉の抜け殻があった。こんなに集団で見たのは初めてであった。他の葉っぱにもたくさん着いていた。

 ムクロジの実は、今青々と実を付けていた。これが熟して落ちるのはいつごろなのであろうか。東京に行く楽しみが増えた。公園管理所に聞いてその時期に足を運んでみよう。

 

ムクロジは、羽子板の羽根のところに使われているものです。果肉の方は、むかしは洗剤に使われていたという。数珠にも使われる。

 


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